今回は恒例の夏期の逆水門方向観測を兼ねて、一泊二日の調査となった。初日の出港時は今夏の猛暑の名残で日差しが強かったが、次第に曇りとなった。二日目は朝から小雨だったが、昼ごろには本降りとなり、悪天候で観測船の視界不良のため、北浦心の観測は欠測となった。
曇りと雨の天気で水温が低めで、日照が弱いため、植物プランクトンによる光合成が不活発で、江戸崎入り(二日目の悪天候時の観測)では溶存酸素が低下していた。透明度は、夏期に植物プランクトンが多いことを反映して、
100cmに達しない地点がほとんどだった。無機態窒素は特に高くないが、リン酸態リン濃度が各地点でやや高かった。 COD値は、 7mg/L前後で、特に高くない。
植物プランクトンでは、珪藻類のメロシラ(タルケイソウ)、藍藻類のフォルミディウム(プランクトスリックス類)がやや多かった。一方、動物プランクトン採集用のネットには、藍藻類で水中浮遊性のミクロキステイス・イクチオブラーベがやや多く入ったが、表層水には少なく、したがって観測データには反映されない。水面浮上性の他のミクロキスティス類はほとんど検鏡されなかった。今夏は7月下旬から
8月中旬にかけて猛暑日が続き、霞ヶ浦の水面近くの水温は30度を超える日が多かったが、土浦港でのアオコ発生量は特に多くはなかった。
動物プランクトンでは、夏期に優占するオナガミジンコが多かったのは例年どおりだが、ケンミジンコ類がやや多い印象だった。ワムシ類は地点によって差があったが、多い傾向だった。カブトミジンコ、イサザアミは、どの地点でもネットに入らなかった。
逆水門方向の観測では、逆水門下、銚子港沖で、電気伝導度、塩化物イオン濃度が低く、淡水に近かった。これは、利根川河口堰の水門が開いたため、利根川河川水が河口近くまで達したからである。少雨期の冬期では、逆水門、利根川河口堰ともに閉鎖されていることが多いが、年によって雨が多い夏期は、両水門の順流放流によって淡水が河口近くまで押し出すことになる。
逆水門方向の観測は、逆水門の閘門を観測船で通過して行なうが、今回、閘門の閘室内で、ハクレンが数百匹死んで浮上している状況を観察した。ハクレンは死亡して数日経過していると思われ、悪臭を放ち、脂肪が水面に大量に漂っていた。ハクレンが閘門に閉じ込められて死亡していることは時々あるが、これほどの大群が閘室内で死亡しているのは珍しいことだった。 |