猛暑の中、出航した。日射しが強く、さらに水面の照り返しで紫外線が倍増し、参加者は相当日焼けしながら2日間にわたり、湖上観測を続けた。湖上を時速40kmほどの速度で移動中は風が爽やかだが、船を停めて観測中は相当暑い。それでもボラのジャンプや周辺台地から沸き立つように立ち昇る積乱雲を眺めながらの航行は飽きることがない。牛渡沖では、近年では珍しく横引(イサザ・ゴロ引網漁)漁船が一隻出漁していた。イサザアミが久しぶりの好漁になっているためか。
水域によって水の色や透明度が異なっていた。高浜入りや北浦では湖水の緑(藍藻色)がやや濃く、pHや溶存酸素が高く、植物プランクトンの発生量が多いことを窺わせる。溶存酸素、pHは、天候、時間などによって大きく変化する。電気伝導度は、この夏の少雨のせいか、やや高い。透明度は地点によって異なるが、夏期としては高い地点があった。
1日目、赤煉瓦の横利根閘門(国指定文化財)を低速で通過し、佐原沖の利根川へ出ると、水位が低く、川底の流木が水面に出ていた。利根川の渇水と利根河口堰の開門による放流の影響と判断された。2日目、逆水門の閘門を船で通過した。閘室内では、20匹ほどのハクレンの死体が浮いて腐臭を放っていた。昨年夏期の通過(約
200匹の死体)ほどでは無かったが、逆水門下流では死魚の分解の影響か、溶存酸素が低く、酸欠状態であった。
銚子港を横目に、河口のさらに沖合まで船を進め、黒潮の透明度を測定してみたところ、20mを超えた。小笠原沖に台風発生のニュースを聞いていたが、うねりはまだ小さく、台風の影響はまだ出ていなかった。二日間を通じて波浪は強くなかったが、銚子に近づくにつれ海洋性気象となり、海風が河口方向から吹き渡り、逆風の中を銚子に向かって航行した。その風は微かに醤油の匂いがした。
植物プランクトンは少なめだった。動物プランクトンによる捕食圧のためと考えられる。各地点で珪藻類のアウラコセイラ(メロシラ:タルケイソウ類)が優占していたが、多くはなかった。北浦湖心では、ミクロキスティス、アファノカプサ、糸状藍藻類がやや多く、COD 値が9.8mg/L と高い理由であろう。各定点では水面に浮上する藍藻類の発生はなかった。
動物プランクトン類では、夏の常連であるオナガミジンコ、ヒゲナガケンミジンコが、大発生といえるほど優占していた。これによって植物プランクトンが捕食されて少なく、COD値が北浦湖心以外は高くない理由であろう。ワムシは西浦6定点では皆無だったが、北浦湖心、逆水門下、銚子港沖では、かなり発生していた。ゾウミジンコ、カブトミジンコの発生はなかった。
逆水門下では、アンモニア態窒素、リン酸態リンが高かったが、ハクレンの死体が分解されつつあったためと考えられる。塩化物イオン濃度は、逆水門下、銚子港沖で、利根川河川水の押し出し(利根河口堰一部放流)で、冬期より低かった。
|