台風の影響で朝から曇が厚くかかる天候だが、無風なので出港した。雲はしだいに湖面上空を覆い、沖から見る湖岸の景色が霞んでいた。調査船は GPSと船舶用ナビを搭載しているが、湖面には竹製や鉄製の杭が出ていることがあり、船長は細心の注意を払って前方を凝視しながらの航行となった。スピードを出せず、晴れた日よりも時間がかかった。太陽光が弱いので、植物プランクトンの光合成活動に影響し、溶存酸素濃度がやや低く、pHも中性よりやや高い程度だった。水温は23℃付近だった。ボラのジャンプ、カルガモの小群、カワウ、魚を捕らえて杭に止まるミサゴ、漁港の石組の上のアオサギ、黒い頭がやや白くなりかけたユリカモメ小群など、季節変化を感じさせる生きものたちが観察された。午後は本格的な降雨となり、やや風が出たが、最後の江戸崎入りを含めて全6定点の観測を行い、5時過ぎに土浦港に戻ることができた。
各地点では透明度が100〜120cm前後と良好だった。これは今秋、植食のワムシ類とゾウミジンコ類がやや多く、植物プランクトンを捕食しているためと考えられた。早春から優占していた肉食ケンンミジンコ類は激減していた。また秋の長雨で湖水の入れ替わりが促進されたこと(塩化物イオン濃度が各地点でやや低い)、観測日直近では波浪が強い日がなく底泥の巻上げがないことも、良好な透明度の要因と考えられる。このことは顕微鏡によるプランクトン計数と、COD
測定でも裏づけられた。植物プランクトンが少なく、COD 値は近年にないほど各地点で低く、高浜入は5mg/L台であったが、他地点は4mg/L前後だったことも良好な透明度に符合する。
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