一日中凪ぎ状態で、鏡のような湖面を調査船は進行した。透明度がやや高い冬期特有のカスミアン・ペール・ブルーの湖面にゴマ粒を撒いたように、カモ類が翼を休めていた。一群で数百羽にもなり、調査船が近づくと一斉に飛び立つが、やり過ごすとまた湖面に降りた。真っ白なユリカモメも多数見られた。薄もやの向こうに筑波山が藤の花のような色をして浮かび、名匠溝口健二監督の雨月物語のような幻想的な風景だった。霞ヶ浦上空では真綿を薄く伸ばしたような絹雲がかかり、風がないのでほとんど動かない。夕刻、日没後の土浦港に入ったが、静かな湖面に街の灯が映え、安堵する光景だった。
透明度は全6地点で1〜1.3mほどだった。例年12月は水温が低く、日長時間が一年で最短で、植物プランクトンが少ない時期であることから、この良好な透明度の理由が説明されるが、さらに全地点でワムシ類が多く、植物プランクトンを捕食していることが考えられる。ワムシはワカサギ、シラウオの餌として重要なので、北浦でシラウオが好漁という報道と符号する。このままワムシの優先が春まで続けば、ワカサギ、シラウオ仔魚の初期餌料になり、来年も好漁が期待される。今回、良い透明度を反映して、COD値、各無機態窒素、リン酸態リンも低めだった。
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