例年5月は、沖合から沿岸の新緑を眺めながらの観測である。カシ、シイ、クス、タブなどの照葉樹に加えて、クヌギ、ナラ、サクラ類などの落葉樹の若葉が眼に優しい。里山が薄緑から濃緑までグラデーションのあるブロッコリのように見える。
5月の湖水は、例年植物プランクトン、植食動物プランクトン、肉食動物プランクトンの動的せめぎ合いの結果として、透明度、水色、無機態窒素とリン濃度、COD 値が変化する。6定点のうち、高浜入で最も緑色が濃く、無機態の窒素とリン濃度、COD 値が高いことは、高浜入りが浅く、水温上昇とともに底泥から栄養塩類が湖水に回帰し、植物プランクトンが増殖していることを示している。春期の植物プランクトンはハリケイソウ類、タルケイソウ類の珪藻類が主体である。
今年の2月、4月の観測では、ワムシ類が大量発生していたが、5月の結果ではワムシ類が劇的に皆無となり、替わってカイアシ類(コペポーダ)のケンミジンコ類が独占状態だった。これはケンミジンコがワムシ類を食べつくした状態を示していた。こうした推移は一昨年とよく似ている。昨年は2月からケンミジンコ類が大発生し、ワカサギ、シラウオの初期餌料であるワムシ類を捕食したため、ワカサギの成長と漁獲量に影響した可能性があった。今年はワカサギ漁が豊漁だった一昨年同様のプランクトン相の推移を示しているため、ワカサギの好漁が期待できるかもしれない。
この日午後、霞ヶ浦湖上では強風が吹き、一時白浪が立つほどだったが、夕方の帰路では風が弱まった。夜のテレビニュースでは、東北地方ではさらに強い風が吹き荒れ、山火事が頻発したことを報じていた。 |