本年度下半期は隔月の観測になるため、今回は8月以来2ヶ月ぶりだった。この日は一日中曇りで風が弱かった。調査船からの沿岸の眺望は霞んでおり、良い記録写真が撮れなかった。各定点の透明度は1m弱。動物プランクトン相はオナガミジンコとケンミジンコが優占していた。三又湖心と高浜入ではゾウミジンコが発生していた。9月は観測していないが、ゾウミジンコがよく発生していた可能性がある。8月初めには皆無だったワムシ類が10月初めに発生してきた。植物プランクトン相では藍藻類のフォルミディウム(プランクトスリックス類の一種)が多くなっていた。水質の化学分析結果では、COD 、無機態の窒素とリン濃度は特に高くなかった。
伝聞として水産関係者から、今年度のワカサギ漁は10数年ぶりの不漁と伝わってきたが、水質が特に悪化しているわけではなく、孵化まもない早春期の稚魚の初期餌料であるワムシ類の優占がなく、ケンミジンコが多かったことが影響していると考えられる。早春期からケンミジンコ類が多くなっている現象は、地球温暖化の影響が出ている可能性がある。氷河期の依存種であるワカサギにとって産卵期と孵化期は、初期餌料であるワムシが優占するのは好都合だが、ワムシを餌とする、動きが活発なケンミジンコの発生が早まっていることは、早春から水温が高くなっていることを示唆し、ワカサギの生存戦略にとって不都合なのかもしれない。動物プランクトン相は月単位で小刻みに変化していくため、秋期、冬期、春期にかけて月例観測が必要であるが、民間の活動としては費用、体制ともに制約があり、下半期は現状の隔月観測が精一杯である。 |