例年2月は逆水門方向を含めて観測を実施している。暖冬で西高東低の気圧配置が緩んだ合間を縫って、ほぼ無風、好天の気象条件下での観測だった。2日目午後の帰港時はやや波浪が高くなり、高浜入りは欠測となった。穏やかな湖面では、カモ類、カワウ、カイツブリ類が多数観察され、北帰行に備え、霞ヶ浦に集結しているようにみえた。
1月28日〜29日の降雨(桜川源流域で約90mm)により桜川の濁水が土浦入に流入し、水位が上昇(Y.P.+1.4m)、沖宿沖では透明度が低下した。利根川も増水し、濁水が流れていた。佐原沖、逆水門下流、銚子港沖では透明度が低く、電気伝導度、塩化物イオン濃度が低下していた。折から利根川河口堰は開門しており、濁水が、かなりの流速で流下していた。
冬の雨は地球温暖化の影響と考えられるが、霞ヶ浦の水質やプランクトン相、さらには漁業資源への影響が気になる。水温は、どの地点でも7〜10℃とかなり高かった(例年は4〜6℃)。利根川のアンモニア態窒素、リン酸態リン濃度は、霞ヶ浦湖水よりかなり高かった。西浦・北浦の全地点で植物プランクトン(特に珪藻類)の春季増殖(ブルーム)が始まっていた。
北浦湖心(北浦大橋下流)では、水色が深茶緑で植物プランクトン、動物プランクトンともに今回の観測では最も多く発生していた。北浦湖心では白濁していないにもかかわらず、透明度は90cmだったが、植物プランクトンの増殖の影響と思われる。北浦湖心では、ケンミジンコとその幼生ノープリウスが多くカウントされた。今回、他地点でワムシ類が増えてきたが、北浦ではワムシ類は少なかった。ワムシ類がケンミジンコに捕食されていることが考えられる。
ワムシ類は、珪藻類などの植物プランクトンを捕食し、一方、孵化後のワカサギとシラウオ仔魚の餌になるので、それらの成長と漁獲への影響が懸念される。冬期の高い水温は、ケンミジンコの発生、活動の早期活発化をもたらし、ワムシ類、そして冷水域の魚種であるワカサギ、シラウオへの影響が大きいと思われる。ワカサギ、シラウオにとって、@冬期は水温が低く、A春季に向けてゆっくり水温が上昇するにつれて、B珪藻類、次いでCワムシ類が発生し、4〜5月頃にようやくDケンミジンコが活動を活発化させ、それを、成長したEワカサギが捕食するという順番が大事であると思われる。地球温暖化は、霞ヶ浦湖水中の食物連鎖の順番を狂わせて、ワカサギ、シラウオの成長と漁獲に影響している可能性がある。 |