恒例の逆水門(常陸川水門)方向の観測を含む13地点(江戸崎入は天候悪化のため欠測)の観測を実施した。例年は8月上旬に実施してきたが、今年はコロナ禍、オリ・パラ、お盆、猛暑と大雨で不安定要素が多く、結局、月末の一泊二日の観測となった。一日目の天候は晴れて猛暑だが、雲の下に入るとやや過ごしやすい。各水域で、夏の風物詩であるボラのジャンプが見られた。二日目、午前中は晴れたが、午後は北東の涼しい海風が入り込み、陸域の高温で湿潤な大気を冷やし、積乱雲が発生した。夕刻、観測船が土浦港に帰港する直前、市街地が見えなくなるほどの豪雨となったが、船長の慎重な操船で安全に帰着した。夏らしいダイナミックな気象変化だった。
8月上旬は、流域の大雨で霞ヶ浦が増水し、Y.P.+1.7mに達した。中旬以降は、国交省が利根川の水位下降を確認しながら逆水門を開門し、順流放流したので、観測日にはほぼ平水位のY.P.+1.1mに戻った。湖水がかなり入れ替わり、水質への影響を見ることが今回の観測のポイントだった。
透明度は、沖宿沖、牛渡沖で1.2mと良好だった。西浦の他地点も1m程度だった。しかし、北浦、外浪逆浦、息栖真崎では1m前後で、逆水門上下、銚子港沖でも同様だった。これは、8月上旬の大雨で河川から濁水が流入し、利根川からの濁水を合わせて、銚子河口付近に留まっていることを推測させた。
化学分析によれば、各無機態窒素濃度、リン酸態リン濃度は高浜入、佐原沖以外で低かった。COD値はどの地点でも低く、湖水がかなり入れ替わったことを示していた。低いCOD値は、植物プランクトンが少ないことを反映していた。そのうち、顕微鏡による計数で、北浦心、外浪逆浦で、糸状藍藻類であるプランクトスリックス類(オシラトリア、フォルミディウム類)が記録された。糸状藍藻類は、最近数年間は西浦ではほとんど見られない。動物プランクトン相は、地点ごとにかなり異なった。沖宿沖では、ツノワムシが大発生し、透明度上昇と植物プランクトンが少ないことと関連がありそうだ。北浦心、外浪逆浦では、昨年同様、ゾウミジンコが発生していた。逆水門上下地点、銚子港沖では、ツボワムシがカウントされた。逆水門下地点では、ゴカイ類幼生がカウントされた。
1991年9月、二度の雨台風来襲で、霞ヶ浦の水位がY.P.+2.0mまで上昇し、湖水が入れ替わり、水質が大幅に改善されたことがあった。今回はそれ以来である。なお、逆水門の大閘門が工事中で通過できず、管理する国交省霞ヶ浦河川事務所波崎出張所の誘導で、我々の調査船は初めて小閘門を通過し、銚子方向の貴重なデータが得られた。
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