逆水門方向の水質調査は、例年2月に実施していたが、今年の2月は西高東低の冬型の気圧配置が次々に出現し、実施日の予定を立てることが難しかった。安全な船上観測を優先し、観測は3月にようやく実施できた。2月は寒波が来襲したが、関東地方は晴れの日が多く、日照時間は例年並みだった。3月には、水温がまだ低い(7〜8℃)にもかかわらず、春のブルーム(植物プランクトンの大増殖)が起きているかが注目された。なお、江戸崎入は波浪が強く、欠測となった。
湖水の色は淡緑茶濁のところが多く、透明度は西浦で60cm前後だった。北浦と逆水門方向の各地点では、1m前後のところもあった。植物プランクトンの増殖と昨年来の濁りが影響していた。
動物プランクトンではワムシ類が期待したほど多くなかった。1月〜2月の寒波で水温が低い日が続いたため、各地点でワムシ類の発生が遅れているようだ。しかし、北浦、常陸利根川では、すでにケンミジンコがやや多くなっていた。
西浦のCOD値は、波浪で欠測となった江戸崎入を除き、5mg/L前後だった。これは濁りと植物プランクトン増殖を反映していた。濁りにもかかわらず、珪藻類を主とするブルームが起き、CODをやや押し上げているようだ。
北浦心と外浪逆浦のCODは8〜9mg/L前後だった。これは、珪藻類を主体とする植物プランクトンの春季ブルームを反映していた。無機態各窒素とリン酸態リンは例年並みで、特に高くはなかった。なお、北浦心では大型のカブトミジンコ(ダフニア)が出現していた。
逆水門方向観測では、逆水門の直下、銚子河口では、電気伝導度、塩化物イオン濃度が高かった。逆水門直上では、水位を約20cm上げているにもかかわらず、塩化物イオン濃度はやや高く、塩水が逆水門のわずかな間隙から上流に漏れているようだ。
これらの結果は、ワカサギ、シラウオの仔魚の成長に影響し、本年の漁獲高を予測する材料になる。3月時点で珪藻類はよく増殖しているものの、初期餌料であるワムシが少ないので、4月以降の観測結果が待たれる。
水質調査研究会20年間のまとめ論文ができました。他関連論文も以下です。
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